2006年07月27日
アレルギー性疾患について
はじめに
アレルギー性疾患は人間だけでなく、動物たちにも非常に多く見られます。
アレルギー性疾患には、アレルギーの原因となるもの(これをアレルゲンと言います)が必ずあるはずです。
そして、アレルゲンは個人個人により、もしくは個々の動物により、それぞれ異なります。
一方で、「『アレルギーに良い』『アレルギーが起きない』と、お店や友人に勧められたフードを食べているのに改善が見られない」という相談をよくお受けするのも事実です。
繰り返しになりますが、アレルギーの原因は個人個人で異なります。
例えば、お隣のお子さんが卵にアレルギーがあるからといって、自分の子供に卵を食べさせない、ということは有り得ないでしょう?
ところが、動物のことになると、アレルギーの原因をまだ調べていないのにもかかわらず、『○○はアレルギーに良い』『△△がアレルギーの原因だ』などと他人から言われた情報をそのまま信用してしまうことが少なくないようです。
アレルギーの原因が食べ物とは限りません。
花粉、ハウスダスト、ノミ・ダニ…様々な原因が考えられます。
そもそも、その症状は本当にアレルギーなのでしょうか…?
アレルギーであるかどうかを確定するには、似た症状を起こす他の疾病を除外することがまず必要になります。
犬猫の場合、アレルギーは皮膚に症状が現れることが多いのですが、これと似たような症状は、細菌感染、真菌(カビ)感染、ダニやノミの寄生などでも起きることがあります。
これらの可能性を除外した上で、初めてアレルギー性疾患を疑うことができるのです
アレルギー性疾患の治療にあたっての基本的知識・原則
1. アレルギー性疾患であることを確定するために、他の疾病の可能性を除外する
前出のように、似た症状を起こす他の疾病を除外することが重要です。
細菌や真菌が原因で皮膚炎が起きているのに、アレルギーの治療をしても、改善は期待できません。
2. アレルギーの原因を調べ、できる限り生活環境から除去する
アレルギーには必ず原因(アレルゲン)があるはず。
可能な限り、原因を追究しなければなりません。
原因を知らなければ、それを取り除くこともできません。
つまり、いつまでたっても症状は改善しないままです。
ただし、原因によっては生活からの除去は困難な場合もあります。
3. アレルギー体質が「治る」可能性は低い。アレルギーはコントロールするものである。
残念ながら、アレルギーを起こす体質が、簡単な治療や対策で「治る」ことはあまり期待できません。
特に15~16年の寿命である犬や猫たちが、その一生の間に急激に体質が変化することはほとんどないのです。
減感作療法など、特殊な治療方法によって改善する可能性はありますが、かなりの費用と手間と時間が必要です。
アレルゲンを除去することが可能なら、その方がよほど少ない経費でコントロールする、即ちアレルギーが起きにくいように調節することができるはずです。
4. アレルゲンは1種類とは限らない
1件の患者さんにおいて、複数のアレルゲンが関与していることは全く珍しいことではありません。
5. それぞれの原因によるアレルギー反応の『合計』が限界を超えた時にアレルギーは症状として表面化する。
例えばアレルゲン(アレルギーの原因)が5種類だとしましょう。
それぞれのアレルゲンによるアレルギー反応は小さくても、5種類分の『アレルギーの合計』がある限界を超えていると、ひどいアレルギーとして症状が表面化します。
逆に、たとえ1種類のアレルギーだけでも軽減でき、結果的に『アレルギーの合計』を限界以下にすることができたなら、症状は改善することが期待できるのです。