2006年07月24日
しつけにおける飼い主の心得
1.犬をしつける時は真剣に
犬は飼い主の心理状態に敏感です。
本来犬は言葉を使用して会話しているわけではなく、お互いの態度や雰囲気を鋭く読み取ってコミュニケ-ションを成立させています。
ですから、「こんなしつけは必要ないのでは?」とか、「できなくてもいいや」などと、飼い主がいいかげんな気持ちでしつけに臨むと、犬はそれを見ぬいて、同様にいいかげんな反応をしてしまうのです。
「これは必要な教育であり、自分の犬は必ずできるようになるのだ」という確固たる信念を持って臨むべきでしょう。
2.「しかる」と「怒る」を区別すること
犬をしつける時には感情的になって怒らないようにしましょう。
必要なのは「しかる」であって「怒る」ではありません。
感情的になると冷静な判断ができず、しつけの上で不都合な行為をついついやってしまいます。
しまった、と気づいたところで、人間同士と違って、後になって言葉で取り繕っても犬にはわからず、飼い主が怒ったときの感情的な行動の悪い印象しか残りません。
人間の子供の教育と全く同じで、冷静に「しかる」ことが重要なのです。
3.しつけの不備は飼い主の責任.犬のせいにしない
ほとんどの犬はしつけを身につけるのに十分な学習能力を持っています。
犬が飼い主のいうことをきかない原因の多くは、飼い主の教育手腕の未熟さにあります。
「ウチのバカ犬が…」などと飼い犬をけなすのは、飼い主である自分自身の指導能力の低さを宣伝しているようなもの。
あらゆる教育(しつけ)を施し、プロの訓練士が結果を出せないような犬についてはじめて、その犬の能力に疑問を持つことが許されるのです。
4.犬の能力を過小評価しないこと
犬は世間一般に認識されているよりはるかに知能が高く、ただ真の実力を発揮していない(正しくは実力を発揮させてもらえない犬)が多いだけなのです。
「ドアを開ける犬」「お使いに行く犬」「電話の相手を察知する犬」「数を数える犬」等、様々な能力の犬がおもしろおかしく紹介されますが、これらは犬の本来の実力を考えれば、全く驚くには値しない当たり前のことです。
むしろ、この程度のことを驚いたり誉めたりすることが多いのは、人間が犬の能力を過小評価しているからに他なりません。
こんなことは犬にはできないだろう、とたかをくくって、我が犬のせっかくの能力を無駄にしないようにしましょう。
5.犬をしつけるということは「適切な支配」を意味する
犬を「支配する」「命令する」という言葉にアレルギ-をお持ちの飼い主さんもいらっしゃるようですが、これはあくまで表現の問題。
「スワレ(座れ)」という「命令口調」も、「オスワリ」も実際に犬に求めていることは全く同じ事す。
犬を飼うということは飼い主さんの好みにかかわらず、犬を支配することであり、真の意味で「完全に自由な」飼い犬は存在しないのです。
犬が自分で好きな食べ物を買い食いに出かけるわけではありませんし、好きな時に勝手に散歩に行けるわけでもなく、食・住他、生活の全てが飼い主に影響されて生活しているのです。
つまり、犬を飼った以上、飼い主は自分の責任において犬を支配せざるを得ないのです。
その支配のやり方が間違っていると、わがままな犬に育ったり、逆に犬への虐待につながったりするのです。
6.「頭が良い」と「人間の命令に従う」とは全く別物であることを認識すること
頭の良い犬が、全然飼い主の言うことをきかない例は非常に多いのです。
「頭が良い」とは知能が高い事を意味し、「問題解決能力の優秀さ」を評価しているのです。
一方、「人間の言うことをきく」は服従性、すなわち「人間に従う気持ち」があるかどうかの問題であって、「問題解決能力」とは無関係です。
一般に人間は自分に都合の良い働きをする犬を頭が良いと考えますが、これは誤りです。
「頭の良い=知能の高い」生徒が必ず教師を尊敬して常に従うとは限りません。
むしろ、生徒の頭が良いために、教師の能力の低さに気づき、従わないこともあるはずです。
多くの場合、犬が言うことをきかないのは「頭が良くない」ためではなく、命令する人間がその犬にとって役不足であり、従う必要性を認めていないからです。
例えばプロの訓練士に初めて対面した犬が、萎縮してすぐに従うことがあります。
これは訓練士の醸し出す絶対的自信や、それに基づく態度、適切な指導法等により、訓練士の実力を犬が敏感に感じ取り、逆らえない、従わざるを得ない、と認識するからです。
極端な表現をするならば、犬が飼い主の言うことをきかないのは犬がバカなのではなく、犬が飼い主をバカにしているためだと認識すべきでしょう。